歯周疾患に罹りやすい状態・進行しやすい状態
Susceptible and resistless condition of periodontal disease
はじめに
歯周病を、組織・病理のうえからだけでなく、患者の疾病に対する考え方・対処の仕方など生活の中にある病因条件までを含めての、予後判定と診断の重要性を概説する。
歯肉を歯周組織の窓とし、それが罹患しやすい状態か、急激に悪化に向かう状況にあるのかを誤りなく、いかに判断するのかを第1問とし、判断したあと、どのように対処すべきかを第2問として、早期治療と再発防止に役立てたいとするのが筆者に与えられた課題と理解する。要約
現今一般臨床の場で、歯周病に罹りやすい状態にあるのかどうかを問題にできるのは、
①ある部位は罹患し、他の部位は未発の健康状態であるような部位について。
②適切な治療処置によってほとんど健康と思われるまでに回復治癒した患者の、ある部位だけが再発しているような場合の健康部位について。罹りやすいかどうかは、病原体である歯垢の量、停滞時間、毒力の大小に関係し、生体の側からは抵抗性の有無、強弱に関係するであろう。
生体の抵抗性は先天的なものと後天的諸条件に左右され、同一人でも一定不変のものではない。
抵抗性が弱く、病原体歯垢の毒力が強い場合は進行が早く、反対の場合は遅い。歯肉は、咀嚼粘膜masticatory mucosa とも歯齦ともいい、食物を咀嚼する際に食物の擦過刺激・摩擦力に対抗し、近接する諸組織の引張力に耐えられるようにつくられている角化組織である。また辺縁部組織は歯垢などによる化学仲介物質(chemical mediator)に侵されやすく、この備わった抵抗力は適当な機能的刺激に対しては維持され、増強されもするが、その(機能とそれに件う刺激)減退とともに、抵抗力が弱化し、消失さえすることについては、あらゆる組織臓器と同様、例外ではない(廃用性萎縮)。
また不適切な咀嚼咬合圧の持続は、歯周組織の一部に外傷を与え、歯肉の病状を悪化させ回復を阻害するし、代謝障害によっても歯肉の病状は常に悪化する。
これらは歯周組織の抵抗性を弱める条件の一部である。- 現今一般にみられる歯周組織の状態
近年わが国の高度な経済発展とともに、食生活が急激に欧米化し、味つけ、加工食品の軟食、高温食が一般常食化したことで、咀嚼の機能は急激に低下し、それに関与する歯肉を含め歯周諸組織の抵抗力は減退・弱化している。
またこの食文化の急変は食滓、ひいては歯垢の付着残溜を加速度的に増加させ、その病原性は増強・悪化され、それが継続的に侵襲している状態にある。 - 健康歯肉と罹患歯肉―その区分はあいまいになりやすい
現今の日常臨床では、健康歯肉をみることはほとんどまれである。
なぜならば来院者は、何らかの病状を自覚し来院してはいるが、気がついてすぐ来院する場合はほとんどない。
たとえば、むし歯の痛みを感じた場合でも本能的・無意識的に、あるいは意識的にその部を避けて偏位咬合しながら咀嚼し、そのうえブラッシング・含嗽などの口腔清掃もその部を避けるようになり、そして数日、数週間、数カ月を経てのち受診する場合が多い。したがって、その間に必然的に歯肉炎など歯周組織疾患を発症している。
一般的に、歯周疾患の初期は自覚されることがほとんどない
初期の歯周疾患は、患者に痛感を与えることなく、また発赤・腫脹も健康な場合と酷似していて差異が不明確であるため病変と理解されず、患者は疾病とは気づかず、体質と誤解し、主訴としてあげることはほとんどない―などの点から、医療者も注意することなく、不問にしやすい。
したがって健康歯肉と初期罹患歯肉の区分はあいまいになりやすい。このような初期軽度の歯内炎は、医療者の発見・指摘によらなければ放置され、進行・悪化し、重症となる。
そして発痛や動揺のための咀嚼不全などにより、患者が保存処置を希望したときには、「手術あるいは抜歯以外に方法なし」などと申し渡されれば「今まで何度も受診したのに、1度も注意をしてくれなかった」と不満をもって転医することにもなりかねない。一部分は罹患あるいは再発しているが、他の部位は健康で美しい歯肉の場合、その歯周組織は罹患しやすいのか、そうでないのか—素因を含めて何を拠りどころとして見極められるか
素因とは
あらかじめ個体自身の内部にあって病気になりやすい形態的または機能的性状をいう。
換言すれば、疾病誘発因子に対する個体の抵抗性の滅弱した状態と見ることができる。
同じ環境にあり、同一病原体の侵襲を受けながら罹患する人と罹患しない人があり、また、例え罹患しても、その程度に軽重の差を見るのは疾病の素因に個人的な差異のあることによる。
素因に似て非なるものとして注意を要するのは曝露expositionである。
これは疾病の原因となる外因に遭遇する機会の多いことをいう。素因には一般的素因と個人的素因の別がある
- 一般的素因:多くの人に共通するもので、生理的に存在する身体的性質である。よって生理的素因とも呼ぶ。次のようなものがこれに属する。
①年齢による素因
②性別による素因
③人種による素因
④臓器および組織による素因
まさに成人病的歯周疾患は、①年齢による素因が強力に関わる。
①と②を素因とするものとしては、思春期の歯肉炎、女性の閉経期の骨代謝異常などがあげられる。
③については、日本民族の食文化は、肉食を伝統とせず、穀物菜食、繊維性食品の精咀嚼(よく噛むこと)であり、その急変改悪は歯周疾患に対して素因となる。
④については、歯周疾患の原因といわれている歯垢の異常停滞は、外襲原因に接触する時間と頻度が高く、長くなっただけでなく、歯肉の辺縁組織の抵抗力の弱化のうえに、毒性の強力な病因として襲いかかっている。
- 個人的素因:特別の個人に見られる病的性状である。よって病的素因ともいう。
これは①先天性素因と、②後天性素因に分け、前者には特異〔体〕質、および各種の体質(発育不全体質、卒中体質、結核体質、浸出性体質など)があげられ、後者はこれを局所的のものと全身的なものに区別している。
「同じ環境にあり、同一病原体の侵襲を受けながら、罹患する人と罹患しない人の別がある」のは、抵抗力の強弱による。
組織抵抗力は、ラマルクの用不用説を持ち出すまでもなく、組織は機能を全うする間は維持され、機能を失ったり、不全の状態であれば、抵抗力は減弱する。
歯周組織とて例外ではないとすると、硬いもの好きでよく噛む人は抵抗力が強いし、軟らかいもの好き、あるいは噛まないような噛み方で食事をすませる早飯の人は抵抗力が落ちてくるはずである。
「素因に似て非なるものとして注意を要するものは曝露」
これは疾病の原因となる外因に遭遇する機会の多いものとして解説されているが、高温食や異常乾燥(口呼吸)の場合などである。
- 現今一般にみられる歯周組織の状態
Ⅰ. 歯肉の健康推移の見通し(予断学—片山)
歯肉の健康推移は、組織の置かれている素因的な基盤と病因の有無、強弱だけからの判定ではなく、そのうえに、生活のなかでの健康変数的条件の有無を察知(診断)して、可能なあらゆる方法によって確かめ、総合判断して診断(予測・判断=予断)しなければならない。
歯肉(歯周組織)の健康とは、組織的・病理的判定によらなければならないが、臨床的あるいは概念的には、生命のあるかぎり(一般的には平均寿命を越えるまで)十分に歯牙を支える機能を果たしうるような状態といえるであろう。Ⅱ. 70歳以上の年齢で十分機能している歯牙と、その周囲組織の状態
(健康な歯周組織)
人間の健康とは、社会の状況に関わりながら定義される。
現在のWHOの定義によれば、「健康とは単に病気や虚弱でないというだけでなく、身体的にも精神的にも、また社会的にも申し分のない状態であるー“Health is a state of complete physical,mental and social well-being,and not merely the absence of disease or infirmity」とされている。
「well-being:申し分のない状態」の実現であるが、誰がすべての組織について判定し得るか、その意味からは、健康は幻想でしかないと言えよう。現状では人は,社会人として人並みに働き生活していれば、のっぽであろうとちびであろうと、白髪や老眼であろうと、顔にしわが増えていようと、歯並びが悪かろうと歯が摩耗しようと、少々歯ぐきが減ろうと、丸ごとの人問として健康であると思っている。
さらに歯周組織の健康を考える時、わずかな炎症や浅いポケットがあったり、歯肉の幅が狭かったり少々歯並びが悪かったとしても、それらが十分歯牙の機能を支え、悪化進行しないように適正に対処されていて、寿命のある間―70歳を越えるまで機能するであろうと見通せる状態であれば、ある年齢のその時点での状態は健康であると判断できる。
それには素因を含め、そのとき組織がどうあるかということと同時に、発病あるいは進行を阻止できる条件が、その人の生活のなかに具備されているかどうか、この点こそが判定の重要な基準となる。初診時、訴えから外されていても、本人は気づいていて適正に対処されているのであれば悪化進行は少ない。
反対に発症にも気づいていないし、歯周疾患について無知であるならば、悪化進行させる最悪条件であり、必ず悪化するものと判定、診断(予断)しなければならない。来院するほとんどの患者に、歯肉炎、歯周炎が部分的に見られるのにも関わらず、それらに対しては無処置、無指導のままで、主訴に対してだけの治療をしたとしても、そのことだけで自然に治り、再発することのないような歯肉炎、歯周炎は経験したこともない。
疾患を発症進行させる病因に全く手をつけずに残し、その上に人工修復装置の生体異物的不調和性が加えられた治療の後は、病因諸力はますます強力に跳梁跋扈する。
つまり再発、進行、悪化必至の状態に置くような治療は片手落ち、手抜きの治療と指弾されるのは当然のことと言えるであろう。初期歯周疾患治療は非常に効果的であるが、最も重荷な治療時期である。
反面再発もまたごく容易な疾患であるため、効果的に治療できたとしても、それで治療を成功し終えたものではなく、再発を完全に阻止するだけの発病諸因子の永続的除去が可能になり完成した時に初めて、真の治療が成功し完了する。
文明病といわれる生活由来性の疾患治療にあっては、このような考え方は重要である。歯周病変の治癒は多くの場合(初期を見逃し進行してしまった場合)、組織的完全回復は望めず、一部欠損を残したまま健康化するのであり、その後再発すれば一層欠損が進む。
このような特殊な疾患であるからこそ、この考え方は、必然的また不可欠な治療概念であることを理解しなければならない。Ⅲ. どのように患者に接すればよいのか
来院患者の思いは種々雑多である。
「歯の1本や2本、無くなったとて大したことではない」だが、「この痛みだけはぴたりと止めてほしい。また痛くなれば、それはその時のこと」「身銭を切って治した歯だから、それに見合うだけ具合良く、長持ちしてほしい」「話と違って具合がよくない、けしからん!!」 などであろう。
総じて言えることは、「悪くなれば今の進んだ医学で十分治せるはず」「自分の歯よりもきれいで長持ちする歯に、保険証1枚で治せるはず」「それができないのは藪医者か、悪徳歯医者」。
よく聞かされる予防の手当、メインテナンスの重要性などは、治療の不備による処置後の悪化再発に対する歯科医側からの予防線か逃げ口上で、「そのようなお説教聞く耳もたん」との腹が据っていることである。
だが最も強烈で一般的な思いは、これもダメ、これもダメとて抜かれてしまい、残る歯もやがてダメになると言われた時の深刻悲痛な思いではなかろうか。
具合のいい入れ歯ができるからといくら聞かされてもてんで耳に入らず、仕事も手につかず、四六時中気にかかり、はては歯科医に対する怨念のかたまりと化す。
その結果、長年つき合ったよしみもどこへやら、さまよい歩くハシゴ患者にしてしまうことになる。
だとて。少しも自覚症状もなく、むし歯の痛みが止まればケロリとアボイントを忘れるような人たちに、「最終修復物は歯周組織の健全化のあとに……」などとのたまうのでは、これまた「へえーそうですか」の一言でおしまいになるかもしれない。
そこで、どのように患者に接すればよいかということになる。一般来院患者の主訴に表われない初期軽症の歯周組織疾患に,どのように対処すべきか
第1に、ほんの短いごくわずかの時間を割いて、初診時また来院の度毎に、全員に罹患歯肉(歯周組織)の状態について、他の場所の、より健康な部位と比較して色相、形態の変化、歯肉嚢の有無と深さ、排膿の状態などを、患者に持たせた手鏡で確認させる。
その変化の原因が何なのか、どうしてそこだけが……という患者の心の中の疑問に答えるように、歯垢を顕微鏡下で(生菌の種類と数、その活動状態についてよくわかるように)見せることができれば、歯垢こそが病因であることを語らずとも感動的に脳裏に焼き付かせることができる。
なおその上に、歯垢の停滞付着の場所と状態を染め出し顕示法により確認させれば、適正なブラッシングの必要性を説明するまでもなく、より良い方法についての指導を求められるようになる。
また、もしこの初期軽症を放置するならば、どのように進行してゆくかを決してお説教でなく、視覚教材としての中程度あるいは重症患者の症例のカラー・スライドやチャートなどによって認識させる。
第2に、病因の根源的、永続的な除去と口腔環境の改善こそが治療の本態であって、それには適正なブラッシング等々の励行が治療の必須条件であると理解させ、治療完了までに必ず習慣として定着させる。
第3に、長らく偏った噛み方を続けていたために定着している異常な咬合癖を、鎮痛、暫間充填などの応急処置ののち、適正な食品を1口50回噛みすることによって正常な噛み方に早く戻してから、その状態に合う修復物を作ることこそ肝要であることを理解させる。
そのために植物性・繊維性食品の精咀嚼の効用を説き、実行を定着・習慣づけると共に、適正なブラッシングの習慣との相乗効果により、歯周組織の抵抗力回復と増強が達成され、再発が防止される。15歳(上)
17歳(下)の状態
生え変わりの時期に治療と口腔保健指導を受け、思春期の変動期を無難に過ぎ、現在健康であるだけでなく、将来も歯周病に罹りにくいと予断出来る状態。
硬いものは好きでなく、付着歯肉の幅は極端に狭い。
しかしプラーク・コントロールその他、口腔保健の諸条件は家族全員十分に身に付けている。
case 1
19歳
工場歯科検診で見つけた健康歯肉。
ブラッシングは我流、硬いもの好き、偏食なし。
歯磨剤の使いすぎだけを注意。
27歳
工場歯科健診記録では、横磨きの弊害をを注意し、フォーンズ法を指導。
36歳
臼歯部初期齲蝕治療時の記録、罹りにくく、進行しにくいと予断出来る。
case 2
13歳
生え変わり時期からの指導を守り、臼歯部初期齲蝕を発見した時の記録。
プラーク・コントロールの不備と一部歯肉乳頭炎を指摘。
13歳
初診より1ヶ月後。
22歳
定期検診時。健康歯肉、罹りにくく進行しにくいと予断出来る。
case 3
37歳
咬耗の状態から見れば明らかに硬いもの好き。食生活にも偏りなく、野菜好き。よく噛んで食べている。
罹りにくく進行しにくいと予断出来る。
43歳
48歳
case 4
23歳
初診時に臼歯部初期齲蝕の治療で始まり、歯肉炎の処置と注意を行なった。
7年後、23歳の口腔内写真
33歳
さらに10年後、33歳の口腔内写真。
罹りにくく進行しにくいと予断出来る。case 5
24歳
臼歯部齲蝕と同時に歯周組織の保全について注意したことを守り続けた推移記録。
42歳
罹りにくく進行しにくいと予断出来る。
case 6
初診 32歳
初診時:数年来歯肉の出血・腫脹を繰り返し、処置を受けていたが好転せず、下顎数本は抜歯しなければとの宣告を受け、驚き、転医してきた。
15年後 47歳
処置後15年間の歯肉。
70歳を超えるまで十分保全可能の条件が確認出来ているので、素因諸悪条件のもとでも十分機能が保持出来ると予断出来る。
現在健康であるし、罹りにくく進行しにくいと診断出来る。case 7
左:54歳 右:59歳
昭和40年、継続歯破損のため来院。
修復処置とともに歯周組織の改善、保全生活のすべてを理解してもらった。それから5年後の記録。左:61歳 右:66歳
49歳から66歳まで、17年間全く異常なく、1歯も損なわず、生涯満足に機能すると予断出来る。
case 8
工場歯科健診記録写真で、検診後の注意と指導を聞き流した思われる2人の口腔内状態。
3年間の記録があるが、経年的にほとんど変化が見られなかった。
この状態が続くのであれば、70歳を越えるまで歯周組織の機能が十分は足されるとは思えない。
このような状態はまさに不健康、病的と言える。case 9
左:71歳 女性
右:74歳 男性
70歳を超えても、このような歯肉状態ーわずかな炎症、浅いポケットがあっても、まさに健康そのもの。
左:78歳 女性
右:85歳 男性
おわりに ―予断学の薦め
一般開業臨床の場で、健全歯肉を見ることはほとんどない。だから、病気になりやすいかどうかを判断する(考え定める)機会もほとんどない。
しかし、適切な治療処置によって健康を回復したケースなどでは、その歯周組織が再発しにくいかどうか、また進行しやすいかどうか、判断が必要な時がある。
ことに手術によって一応回復したとき、これらをどう判断するか。手術をしたことだけでは、今後生涯にわたって諸病因をコントロールすることは不可能である。
再発を防止できるかどうかは、第1病因の歯垢を、あるいはその他の病因(素因)を制御する生活のあり方が、発病阻止(再発防止)を可能にする決め手である。
これらのことを患者自身が認識し、自覚しているかどうかの意識の有無にかかっている。
手術以外の方法で回復し、健康になった時は、治療処置の第1として病因が除去されたためであったが、一部素因的な病因が残っているとしても、全身的な回復力の助成を計る方法の成功によって現在回復しているのである。
その病因除去と素因の無害化の適正な方法の励行の習慣化。そして全身的な抵抗力が損われないで保ち続けられるかの3点についての見通しによって、予断(予想し判断し断定)しなければならない。疾患の再発だけでなく、治療処置、修復装着物の破損によっても処置前の状態に即時に再現される歯科疾患の特殊性のゆえに、処置、修復物の良否、永続性があたかも生体の病後経過のように、またそれ以上に重要視されてきた。
治療(修復処置法→修復装置)の経過が、まさに疾患の予後(俗説的用法ではあるが)と考えられるほど重要な歯科医療の特異性こそが、予後の言葉を俗説化させている主因であるが、その意味を正しく把握したうえで、長期間(再発を防止できる)回復を可能にする方法を模索し考究することを重要視すべきであろう。それゆえ、わたくしはここで改めて、「歯科予断学」を提唱したい。
「そもそも自然治癒力を持たない組織臓器の疾病対策は、完全な初発予防と処置後の完全再発防止が究極の目標であるとすれば、処置の効果をいかに長持ちさせるかが医療そのものの目的である。どのように現症を緩解、回復させたかだけではなく、それがどのくらい存続するかによって批判されるべきものと思う」と、再びここで申し述べる。歯界展望(臨時増刊):第61巻 第6号・昭和58年5月